メーカー転職市場の現状:守りから「攻めの採用」へ
日本全体で人手不足が続く中、とくに変化が大きいのがメーカー(製造業)の転職市場です。
かつてのメーカーは「新卒で入って長く勤める場所」というイメージが強く、
中途採用はピンポイントでしか行わない会社も少なくありませんでした。
しかしここ数年は、
- EV・自動運転など自動車産業の大転換
- 半導体・電子部品への世界的な投資拡大
- 工場のDX(IoT・ロボット・データ活用)の加速
- 少子高齢化による若手〜中堅人材の不足
といった要因が重なり、多くのメーカーが
「新卒だけでは人が足りない」
「必要な経験を持つ人を外から採らないと事業が回らない」
という状況に変わってきました。
その結果、メーカーの転職市場は、
求人数は増えているが、どんな経験・スキルを持っているかで評価が大きく分かれる市場
になりつつあります。
業種別に見る「ホットな」メーカー領域
メーカーと一口に言っても、採用ニーズが特に高い領域と、そうでもない領域があります。
ここでは、今とくに動きが活発な代表的な業種を整理しておきます。
自動車・自動車部品
- EV(電気自動車)、ハイブリッド車、自動運転関連などの新技術が次々と実用化段階へ
- ECU、インバータ、バッテリー、モーターなど電動化に関わるユニット開発が活発
- グローバルでの環境規制強化に対応するため、海外拠点も含めた生産・品質体制の再構築が進行中
完成車メーカーだけでなく、ティア1・ティア2サプライヤーも含めて、
「従来の機械・油圧+電動化・制御・ソフトウェア」をまたいで理解できる人材のニーズが高まっています。
電気・電子・半導体
- 半導体デバイス・パワー半導体・電子部品への投資拡大
- 5G/高速通信向けデバイス、高周波部品、車載向け電子ユニットなどの需要増
- 半導体製造装置メーカーでのプロセス・フィールドエンジニア・IT連携人材などの採用強化
工場は24時間稼働が基本で、歩留まりや安定稼働が事業の生命線です。
そのため、「現場をわかっているエンジニア」かつ「データ・ITにも抵抗がない人」は、年齢を問わず高く評価されやすい領域です。
産業機械・FA・ロボット
- 自動化・省人化ニーズの高まりにより、専用機・搬送装置・産業ロボットなどの案件が増加
- 世界中の工場で使われる装置・ラインを設計・立ち上げるポジションのニーズが底堅い
- 機械・電気・制御を横断して見られるエンジニアの価値が高まっている
ここでは、「図面が書ける」だけでなく、
「現場でどう据え付けるか」「どこが壊れやすいか」「どう改善するか」
まで想像して設計・提案できる人材が求められています。
化学・素材・ゴム・樹脂
- 自動車・電子部品向けの高機能素材、コーティング、接着剤などの高付加価値製品
- 脱炭素や環境規制に対応するための新素材開発
- 生産プロセスの安定化・省エネ化・安全対策を担うプロセスエンジニア
景気の上下動はあるものの、「素材そのものの強さ」で差別化する業界が多いため、
腰を据えて専門性を深くしていきたい人には相性の良い領域です。
職種カテゴリ別に見るメーカー転職の特徴
メーカー転職市場の中心となる職種は、大きく次の3カテゴリに分けて考えると整理しやすくなります。
① 技術職(開発・設計・生産技術・品質)
メーカー求人のボリュームゾーンは、今も昔も技術系職種です。
- 機械設計・機構設計
- 電気・電子設計、回路・基板設計
- 組み込み・制御ソフトウェア
- 生産技術・設備技術・立ち上げ
- 品質保証・品質管理・信頼性評価 など
これらの職種は、景気による波こそあれ、中長期的には
「技術者が足りない状態」が続く可能性が高い
と見られています。
その一方で、
- 「同じ“設計”でも、扱う製品やフェーズによって年収が大きく違う」
- 「社内では評価されていなかった経験が、別の会社では高く評価される」
といったケースも多く、会社選び・領域選び次第でキャリアの伸び方がガラッと変わる職種群と言えます。
② IT・DX系職種(ソフト・社内SE・工場DX)
ここ数年で一気にニーズが高まっているのが、メーカーのIT・DX系人材です。
- 工場の生産管理・品質管理システムの企画・導入・改修
- IoT・センサー・クラウドを使ったスマートファクトリー化
- 製品そのもののソフトウェア化(車載ソフト、アプリ連携、クラウドサービスなど)
- 社内基幹システム・ERP・PLM・MESなどの刷新
これまでは「IT人材=IT企業へ」というのが一般的でしたが、
「メーカー側に入って、自社のモノづくりや工場のDXを進めたい」
という動きをする人も増えてきています。
メーカー側も、
- 「メーカー未経験OK」のITポジション
- 「業務知識は入社後キャッチアップ可」の社内SE
- 「現場出身者がDXに転じる」ような社内公募・配置転換
といった採用・育成を強化しており、ソフト・ITのスキルを持つ人にとっては選択肢が広がっている領域です。
③ ビジネス職(営業・調達・SCM・企画)
技術職ほど目立たないものの、ビジネスサイドの職種もメーカーには欠かせません。
- 法人営業・海外営業
- 技術営業・セールスエンジニア
- 調達・購買・サプライチェーンマネジメント
- 生産管理・需給計画・物流企画
- 経営企画・事業企画・子会社管理 など
最近は、
- 「エンジニア→技術営業・PM」
- 「工場側→SCM・ロジスティクス企画」
といった形で、
「技術バックグラウンドを持ったビジネス職」
にキャリアチェンジする動きも増えています。
年齢・キャリアレンジ別に見たメーカー転職のチャンス
20代〜30代前半:キャリアの“方向性”を決める時期
- 第二新卒〜経験3〜5年の層は、ポテンシャルも含めてニーズが高い
- メーカー未経験でも、「理系バックグラウンド+現場経験」があればチャレンジ可能なポジションも多い
- IT/ソフトとメーカー間の行き来もしやすく、「どの軸でキャリアを作るか」を決めるフェーズ
30代後半〜40代:中核メンバー・リーダー層
- 部署の中核を担うリーダー候補・プレイングマネージャーとして、もっとも引き合いが強いゾーン
- 「プロジェクトを完走させた経験」「若手育成」「改善・コストダウンの実績」などが評価ポイント
- メーカー間の転職で、年収100〜200万円クラスのアップを狙いやすいレンジ
50代以降:専門性・マネジメント経験をどう活かすか
- 特定分野での深い専門性を持つ技術者、工場長・部長クラスのマネジメント経験者など、
スポット的に採用したいというニーズは一定数存在 - ただし求人数は若手〜中堅ほど多くないため、
「どの専門性を軸に、どんな課題を解決できるか」 を明確にすることが重要
「人が足りない領域」と「余る領域」が同時に存在している
メーカー転職市場の少しややこしいところは、
人が足りない領域と、
需要が落ちていく領域が、
同じ会社の中に同時に存在している
という点です。
- EV・自動運転・半導体・DXなど 事業が伸びている領域 は、常に人材不足
- 一方で、成熟しきった旧来技術に依存しているだけだと、
「仕事はあるけど将来的な伸びしろは小さい」状態になりがち
そのため、メーカーでキャリアを積んでいくうえでは、
- 自分の担当している製品・技術が「伸びる領域」か「縮む領域」か
- 3〜5年後も必要とされるスキルかどうか
- 会社全体の事業ポートフォリオの中で、自分のポジションがどう位置づけられているか
を意識しておくことが、とても大切になってきています。
まとめ:メーカー転職は「タイミング」と「領域選び」がすべて
ここまで見てきたように、メーカー転職市場は
- 構造的な人手不足の中で、中途採用ニーズが高い
- とくに、自動車・半導体・産業機械・DX関連は“攻めの採用”が続いている
- 年齢に関係なく、「技術×DX」「技術×ビジネス」の掛け算人材は強い
という特徴があります。
一方で、どの領域を選ぶか・どのタイミングで動くかによって、
5年後・10年後のキャリアや年収の伸び方は大きく変わります。
次のパートからは、メーカーの中でもとくに採用ニーズの高い職種から順に、
- ソフト・IT・DX系(組み込み・制御ソフト、社内SE、工場DX など)
- 電気・電子・回路・基板設計
- 機械設計・機構設計
- 生産技術・設備・工場立ち上げ
- 品質保証・品質管理・信頼性評価
- 調達・購買・生産管理・SCM
- 営業・技術営業・フィールドエンジニア
- 経営企画・事業企画・バックオフィス
といった職種ごとに、
- どんな仕事なのか
- 転職市場のリアル(ニーズ・年収レンジ)
- キャリアパスの描き方
- 未経験/別職種からの入り方
を、できるかぎり網羅的に解説していきます。

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